社会人になって5年目、仕事のプレッシャーと連日の残業で、僕の生活は完全に崩壊していた。食事はデスクで食べるカップラーメン、睡眠時間は平均4時間。そんな生活が続いていたある日、僕は自分の体に起きた異変に気づいた。シャワーを浴びるたびに、排水溝を覆い尽くすほどの抜け毛。朝、枕についた髪の毛の数に、背筋が凍るような思いをした。まだ20代後半、僕のヘアサイクルは、明らかに悲鳴を上げていたのだ。鏡を見るのが怖くなった。以前はスタイリングを楽しんでいたはずなのに、今はどうすれば頭頂部の薄さを隠せるか、ということばかり考えている。人と話していても、相手の視線が自分の髪に向かっているような気がして、自信を失っていった。「このままではダメだ」。そう思った僕は、自分の生活を根本から見直す決意をした。まず始めたのは、食生活の改善だ。どんなに忙しくても、夜は自炊をすると決め、タンパク質と野菜中心のメニューを心がけた。次に、睡眠時間の確保。日付が変わる前には必ずベッドに入り、寝る前はスマートフォンを触らないというルールを自分に課した。そして、週末には軽いランニングで汗を流し、ストレスを発散させる時間を作った。すぐに結果が出たわけではない。最初の1ヶ月、2ヶ月は、抜け毛の量に大きな変化はなかった。何度も心が折れそうになった。しかし、3ヶ月を過ぎた頃、僕は体に確かな変化を感じ始めた。朝の目覚めが良くなり、日中の集中力も増したのだ。そして、半年が経つ頃、ついに髪にも変化が訪れた。あれほど悩んでいたシャワー後の抜け毛が、明らかに減っていたのだ。そして、以前は細く力なく寝てしまっていた髪に、少しだけハリとコシが戻ってきた。ヘアサイクルが正常なリズムを取り戻し始めている。その手応えは、何物にも代えがたい喜びだった。この経験を通じて、僕は学んだ。髪は、僕の生活そのものを映し出す鏡なのだと。髪の健康を取り戻すことは、僕自身が健康的な生活を取り戻すプロセスそのものだったのだ。