M字はげが進行し、内服薬や外用薬、注入治療といった保存的な治療法だけでは十分な改善が見られない、あるいは満足のいく結果が得られない場合に、最終的な選択肢として検討されるのが「自毛植毛」です。「もうM字はげは治らないのか…」と諦めかけている方にとって、自毛植毛は大きな希望となるかもしれません。自毛植毛とは、自身の後頭部や側頭部といった、AGA(男性型脱毛症)の影響を受けにくい部位から、毛髪を毛包ごと(毛根を包む組織ごと)採取し、薄毛が気になるM字部分などの前頭部や頭頂部に移植する外科手術です。移植された毛髪は、元の部位の性質(AGAの影響を受けにくい)を引き継ぐため、移植後もAGAの影響を受けにくく、半永久的に生え続けるという大きなメリットがあります。これにより、薬剤では発毛が難しかったM字部分にも、自然な毛流れで新たな髪を生やすことが可能になります。特に、M字部分の生え際のデザインは、顔の印象を大きく左右するため、経験豊富な医師による精密なデザインと技術が求められます。自毛植毛には、主にFUT法(頭皮を帯状に切除する方法)とFUE法(毛包単位で一つ一つ採取する方法)の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。医師と相談し、自分の状態や希望に合った方法を選択することになります。ただし、自毛植毛は外科手術であるため、いくつかの注意点も理解しておく必要があります。まず、費用が高額であることです。移植する本数や手術方法によって異なりますが、数十万円から数百万円程度の費用がかかることが一般的です。次に、ダウンタイムが必要であることです。手術後には、移植部位にかさぶたができたり、腫れや赤みが出たりすることがあります。これらが落ち着くまでには数週間程度の時間が必要となり、その間は日常生活にも多少の制約が生じることがあります。また、手術である以上、痛みや感染症のリスクも皆無ではありません。そして、移植した毛髪が生着し、成長して効果を実感できるようになるまでには、半年から1年程度の期間が必要です。自毛植毛は、M字はげに対する非常に効果的な治療法ですが、メリットとデメリット、費用やリスクを十分に理解し、経験豊富な専門医とよく相談した上で、慎重に判断することが重要です。