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専門家が語るヘアサイクルを整えるための生活術
今回は、数多くの髪の悩みに向き合ってこられた毛髪診断士の方に、乱れがちな現代人のヘアサイクルを正常に保つための具体的な生活術について、プロの視点からお話を伺いました。「ヘアサイクルは、遺伝的な要因だけでなく、日々の生活習慣に大きく左右されます。つまり、自分の努力次第で、そのコンディションを整えることは十分に可能なのです」と、専門家は語ります。まず、最も基本となるのが「栄養」です。「髪は『ケラチン』というタンパク質でできています。肉、魚、卵、大豆製品などの良質なタンパク質が不足すれば、髪の材料が枯渇し、ヘアサイクルの成長期は短縮されてしまいます。また、そのタンパク質を髪の毛に再合成する過程で不可欠なのが、ミネラルの『亜鉛』です。牡蠣や牛肉などに多く含まれる亜鉛は、意識しないと不足しがちなので、積極的に摂取してほしいですね。さらに、頭皮の血行を促進するビタミンEや、新陳代謝を助けるビタミンB群も、正常なヘアサイクルには欠かせません」次に、専門家が強調するのが「睡眠」の質です。「髪の成長を促す『成長ホルモン』は、私たちが深い眠りに入っている時に最も多く分泌されます。特に、就寝後3時間がゴールデンタイムと言われ、この時間帯に質の高い睡眠が取れているかが、ヘアサイクルの成長期の長さを左右します。睡眠時間を確保するだけでなく、寝る前のカフェインやアルコールを避ける、スマートフォンを見ないなど、深く眠るための環境作りが重要です」そして、「ストレス管理」も無視できない要素です。「過度なストレスは、自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を招きます。これは、髪の成長期に深刻なダメージを与えます。ウォーキングなどの軽い運動や、趣味に没頭する時間を作り、自分なりの方法で上手にストレスを発散させることが、健やかなヘアサイクルを維持する秘訣です。これらの基本的な生活習慣を整えることこそが、どんな高価なヘアケア製品よりも効果的な、ヘアサイクルへのアプローチなのです」。
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ミノキシジル服用中の僕が風邪をひいた日
ミノキシジルタブレットを飲み始めて、ちょうど一年が経とうとしていた。鏡を見るたびに感じていた憂鬱は、生え際に現れた確かな産毛によって、少しずつ自信へと変わっていた。薄毛治療は長期戦だ。この調子で、焦らず続けていこう。そう思っていた矢先のことだった。ある朝、喉の痛みと悪寒で目が覚めた。熱を測ると38.5度。全身の関節が軋むように痛く、頭痛もひどい。完全に風邪をひいてしまった。薬箱を探すと、以前、妻が処方されたカロナールの残りがあった。「これを飲めば、少しは楽になるだろう」。そう思い、錠剤を手に取った瞬間、ふと手が止まった。「待てよ、ミノキシジルとの飲み合わせは大丈夫なのか?」。毎朝欠かさず飲んでいる、あの小さな錠剤。僕の肝臓は、毎日その代謝という仕事をこなしているはずだ。そこに、さらにカロナールという仕事を上乗せして、肝臓は悲鳴を上げないだろうか。ネットで検索すると、「肝機能障害」という怖い言葉が目に飛び込んできて、僕の不安は一気に増大した。自己判断で飲むのは、やはり怖い。僕は、ミノキシジルを処方してもらっているクリニックに電話をかけることにした。受付の方に事情を話すと、「先生に確認しますね」と一度電話が保留になり、すぐに看護師さんから折り返しがあった。「先生から伝言です。用法・用量を守っていただければ、一時的な服用は問題ないとのことです。ただ、市販薬や残っているお薬で対処するのは2日程度までにして、症状が改善しない場合は、必ず内科を受診して、ミノキシジルを服用中であることを伝えてくださいね」とのことだった。その言葉に、僕は心から安堵した。専門家の許可を得られた安心感は、何物にも代えがたかった。僕はカロナールを服用し、その日は一日中眠った。翌日には熱も下がり、頭痛も和らいでいた。この一件を通じて、僕は薄毛治療の奥深さを改めて痛感した。髪を生やすことだけを考えるのではなく、体全体の健康を守りながら、安全に治療を続けることの重要性。そして、そのためには、どんな些細なことでも相談できる「かかりつけ医」の存在が、いかに心強いものであるかということを。