40代も後半に差し掛かり、私は二つの大きな悩みに直面していました。一つは、日に日に増えていくキラキラと光る白髪。もう一つは、シャワーを浴びるたびに感じる抜け毛の量と、鏡に映るぺたんとした頭頂部。美容院で白髪染めを繰り返すたびに、頭皮はヒリヒリと痛み、髪は細く元気がなくなっていくようでした。このままではいけない。そう思っていた時に、友人から勧められたのが「ヘナ」でした。正直、最初は乗り気ではありませんでした。「時間がかかる」「オレンジ色になるのはちょっと…」という先入観があったからです。でも、他に選択肢も見つからず、藁にもすがる思いで、100%天然ヘナでのセルフケアを始めることにしました。初めてヘナの粉をお湯で溶いた時、その独特な草の香りに驚きました。泥のようなペーストを髪に塗っていく作業は、思った以上に大変で、時間もかかりました。そして、洗い流した後の髪は、ゴワゴワときしんでしまい、「やっぱりダメだったか」と、一度は心が折れそうになりました。これが、後に知ることになる「ヘナショック」でした。それでも、「最低3回は続けてみて」という友人の言葉を信じ、2週間後、そしてまた2週間後と、ケアを続けました。すると、3回目を終えた頃、髪に明らかな変化が訪れたのです。あれほどひどかったきしみがなくなり、代わりに髪一本一本に、これまで感じたことのないようなハリとコシが生まれていました。ドライヤーで乾かすと、根元がふんわりと立ち上がり、気にしていた頭頂部のボリュームが、自然に出ているのです。白髪は、確かにオレンジ色に染まりましたが、それが黒髪と混ざり合うことで、まるでハイライトを入れたようなお洒落な雰囲気になりました。何より嬉しかったのは、心の変化です。自分の手で、自然の恵みを使って、髪を丁寧にケアしているという実感。その穏やかな時間は、失いかけていた自信と、自分を慈しむ気持ちを、少しずつ取り戻させてくれました。薄毛が完全に治ったわけではありません。でも、髪質が変わり、ボリュームが出たことで、悩みは格段に小さくなりました。ヘナは、私の髪だけでなく、心まで健やかにしてくれた、かけがえのないパートナーです。