薄毛や抜け毛の悩みを解決したいと願う時、多くの人がドラッグストアの棚に並ぶ「発毛剤」と「育毛剤」という二つの言葉の前で、立ち尽くすことになります。この二つは、似ているようで、その目的と効果、そして法的な分類において、全く異なる存在です。その違いを正しく理解することが、効果的な薄毛対策への、最も重要な第一歩となります。まず、「発毛剤」とは、その名の通り、「新しい髪の毛を生やす」ことを、主な目的とした製品です。日本国内で、「発毛効果」を公式に謳うことができるのは、厚生労働省から「医薬品」として承認された、有効成分「ミノキシジル」を配合した製品に限られます。発毛剤は、すでに髪が抜けてしまった毛穴や、弱ってしまった毛根に直接働きかけ、細胞を活性化させることで、新たな髪の毛の成長を促す、いわば「攻めのケア」です。一方、「育毛剤」は、「今ある髪の毛を、健康に育てる」こと、そして「抜け毛を予防する」ことを目的とした製品です。これらは、主に「医薬部外品」に分類され、その効果は、発毛ではなく、「育毛」「養毛」「薄毛・抜け毛の予防」といった、穏やかな表現に留められています。育毛剤には、頭皮の血行を促進する成分や、フケやかゆみを抑える抗炎症成分、頭皮に潤いを与える保湿成分などが配合されており、髪が育つための「頭皮環境を整える」のが、その主な役割です。これは、いわば「守りのケア」と言えるでしょう。畑に例えるならば、新しい芽を出す力そのものを与えるのが「発毛剤(医薬品)」であり、今生えている作物が元気に育つように、土壌を改良し、栄養を与えるのが「育毛剤(医薬部外品)」です。すでに薄毛が進行し、地肌が目立つようになってきた方が、髪の毛そのものを増やしたいと願うのであれば、選ぶべきは「発毛剤」ということになります。